2015/04/27

チャットワークが資金調達を決断した理由、これからの決意。

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このたび、ChatWork株式会社は、GMO VenturePartnersより第三者割当増資を実施し、3億円を資金調達いたしました。
(※詳しい発表内容についてはこちらのページをご覧ください。)

このブログ記事では、ChatWork株式会社が今回の資金調達に至った詳しい背景や目的、今後の展開について書かせていただきます。


ChatWork株式会社(旧社名:株式会社EC studio)は2000年7月に創業し、今年で15年目になります。

2000年の創業以来、ITによる業務効率化を中心にビジネスを展開し、資金調達はもちろん銀行借入をすることもなく全て自己資金で、14年連続黒字でコツコツと利益を積み上げながら経営してきました。

社員第一主義を掲げた独特の経営スタイルが特徴で、社員満足度調査で日本一を2年連続獲得するなどの実績を、多くのメディアに取り上げていただいたこともあります。

顧客に会わない、電話がない、10連休が年4回、iPhone支給制度など多くの特徴的な取り組みがありますが、経営する上で最も大切にしてきた考え方に『しないこと14カ条』があります。

『しないこと14カ条』には、「他人資本は入れない」、「株式公開しない」という項目があり、今回の資金調達ではその方針を変えることになるため、そこに至った背景も含めて詳しく説明させていただきます。



チャットワークを開発したきっかけ

私たちの会社ではビジネスにおけるチャットの有用性にはいち早くから気づいており、創業の2000年当初はMSNメッセンジャー、2004年頃からはSkypeチャットを社内はもちろん取引先にも導入いただいて、社内メール禁止、社外とのメールも最小限に抑えるようなコミュニケーションスタイルをとっていました。

チャットをコミュニケーションの中心とすることで大変効率の良い、ワークスタイルを実現していましたが、当時使っていたSkypeチャットは、あくまで個人用のツールであり、ビジネス用途としては使いづらい仕様がいくつもありました。

また、2008年頃に新しいクラウドのコミュニケーションサービスとして登場したGoogle Waveも、ビジネスで利用するチャットサービスとしては活用しにくいものでした。(後にGoogle Waveはサービス停止)

世界中探してもビジネスで使えるクラウドチャットサービスがなく、それならば自分たちでつくろうじゃないか!と腹をくくり、チャットワークの開発を開始したのが2010年でした。

チャットワークはただの「ビジネス向けのチャットツール」というわけではありません。

これまで私たちがずっと取り組んできた業務効率支援のノウハウを活かし、ストレスの原因となりやすい「既読機能」をあえて提供しないなど、単に効率だけを追求するのではなく、新しいワークスタイルの提案をしています。

2015年の今となっては個人でもビジネスにおいてもコミュニケーションにおけるチャットは市民権を得られていますが、リリースした2011年3月1日当時はまだLINEもリリースされていない時期でもあり、「メールの時代は終わりました」という挑戦的なキャッチコピーと共にサービスを公開いたしました。



世界へのチャレンジ

開発段階から世界にチャレンジできるサービスを目指しており、リリースの3ヶ月後には「SF New Tech」というサンフランシスコで行われているITイベントでアメリカ人350人、USTREAMで1600人が閲覧している中、人生で初めての英語プレゼンを経験しました。



イベントで新しもの好きのアメリカ人に告知することで、そこからアメリカはもとより世界中に広がっていくことを期待しましたがユーザーはほとんど増えず、期待はずれに終わってしまいました。。。

そこで私はアメリカ人に理解してもらえないのは、自分がアメリカ人の仕事に対する考え方、働き方がわかってないからだと結論づけ、サンフランシスコのbtrax社に2ヶ月間インターンすることにしました。


btrax CEOのブランドン氏には「学生以外のインターンを受け入れたことがない」と困惑されながらも、粘り強く交渉し許可をいただきました。笑
(あの時無理を受け入れていただいたブランドン氏には、大変感謝しています)

その時点で10年の日本企業の経営のキャリアがありましたが、2ヶ月間で体験したアメリカの会社のやり方、仕事に対する考え方が日本と全く違う、日本とは真逆であることに大きな衝撃を受けました。

この感覚を理解しなければサービスがアメリカに受け入れられることはなく、これは社長である私自ら移住して、その感覚を身につけないとダメだ、と判断しました。


日本のスタッフと家族をなんとか説得し、シリコンバレーへと移住することを決めました。

参考記事:



シリコンバレーに移住して、学んだこと

シリコンバレーに移住してからは、日本のChatWork株式会社、米国のChatWork Incの代表として全体をマネジメントしながら、家では生まれたばかりの娘の父親という生活がはじまりました。



聞き取るだけでも難しいビジネス英語、日本とは全く違うビジネス慣習、17時間もある日本との時差に苦しみながらも、なんとかチャレンジを続けています。

移住当初は、シリコンバレーがどういう仕組みで成り立っているのか全くわかりませんでしたが、3年目に入った今はシリコンバレーにおけるスタートアップの戦い方の流儀を把握することができたと思っています。


日本からシリコンバレーを見ると、次々に革新的な大型サービスが生まれてくる「すごい地域だ」というイメージがニュース等でも感じられると思います。

ですが現場にいると、GoogleやFacebookなどの大手から排出される才能溢れる人材に、世界中から集まった資金が投下されたとしても、ほんの僅かなサービスだけしか生き残れないという、大変過酷な環境であることが実感できます。

3年前の自分を振り返って、そんな環境に純日本企業、日本人が自己資金で挑戦するなんて無知とは恐ろしいものだと思うと同時に、知らなかったことでチャレンジできたという無知の力も重要だなと改めて思いました。



自己資金での限界、資金調達の決断

そのシリコンバレー流儀を把握しつつも、あくまで自己資金にこだわって戦うというやり方を続けてきました。

チャットワークのようなサービスを開発・運営していくことは、簡単ではありません。

低料金の月額サービスでは、収益が上がっていくのには大変時間がかかり、開発をするためのエンジニアやデザイナー、運営のためのサポート要員、サーバーなどのネットワーク環境の構築維持費、ビジネスチャットというものを市場に普及させるためのマーケティングコストなどなど、大きなコストを負担していく必要があります。

ChatWork社にはESETという日本ではまだ知名度が低いですが、優秀なセキュリティソフトを販売する事業があり、その事業であげた全ての利益をチャットワークに投資し続けていました。

しかしそれだけでは成長するチャットワークの開発コストを支えることはできず、役員報酬を7割減らすなども含め、徹底した経費削減を実施しました。


このように切り詰めながらもサービス成長を続けることができていましたが、2013年、2014年にはビジネスチャット市場がシリコンバレーでも急速に盛り上がり始めました。

毎月のように競合サービスが生まれ、大きな資金調達をしてどんどん人を採用し、プロモーションを実施してユーザーを増やしていく。
先を走っていたチャットワークにシリコンバレーの企業が一斉に猛追してきたような感覚でした。

2000年からチャットで仕事をしている私たちには、ビジネスチャットがどうあるべきか、どう発展させていくべきかのビジョン、ロードマップが明確にありました。
自分たちが目指す方向性に間違いはないと確信はしていましたが、迫り来る競合に焦りを感じながらも今までの経営スタイルや「しないこと14カ条」を貫いてきました。


しかし、使っていただいているユーザーの皆様から続々と寄せられる声として

「チャットワークがない頃の仕事のやり方にはもう戻れません」
「LINEはプライベート、チャットワークは仕事という切り分けができて助かっています」
「チャットワークで同じ人数でプロジェクトを5倍同時に進行できています」
「チャットワークでしか連絡がつかない人がたくさんいます」

など、チャットワークはすでにビジネスのインフラになっており、チャットワークの成功には大きな責任がかかっていることを改めて実感しました。


やりたいことは山ほどあるのに、自己資金の範囲では全力でアクセルを踏むことができない状況。

そしてこのまま行くと大量の資金が投入されている海外の競合に次々に追い越され、日本発世界的なサービスを目指した目標も夢半ばで終わってしまいかねない。何より選んでいただいたユーザーのみなさまからの信頼を、裏切ってしまうことになる。

ある時、ふと頭をよぎりました。

「このままじゃ誰もHappyにならない」と。

ITを通して「Make Happiness」を実現するという経営理念を掲げながら、誰もHappyにならないことが見えているのに、この経営スタイルを維持すべきなのか。しかし、社外でも社内でも散々通してきたこのスタイルを変えるのは良くないんじゃないか。

葛藤の日々が続きました。


そこで意を決して役員会議で

「どうせこのまま中途半端に終わってしまうくらいなら、資金調達して思い切り攻めてみるのもいいんじゃないか。」

と提案してみました。


出てきた役員ふたりの返答は、口を揃えて

「前からそうした方がいいと思ってましたよ!」

でした。笑

どうやら二人とも、私と同じように悩みながらもその結論に達していたようです。


10年使ってきた社名を変更するのも5分でしたが、14年ずっと貫いてきた経営スタイルを変更するのも5分で決まってしまい、実に自分たちらしい決断でした。


資金調達をして攻めることが決まってからは、徹底した議論が始まりました。
「しないこと14カ条」で守りたかったものは何なのか、資金調達をしてその守りたかったものを守るにはどうしたらいいのか。

出た結論は、やはり「社員満足」でした。

社員満足、社員満足というと勘違いされがちなのが、
顧客満足は二の次なのかと。

いえ、違います。

顧客に接する社員がそもそも満足していないのに、顧客を満足させるサービスを提供できるはずがないという考え方です。


「しないこと14カ条」であった「他人資本は入れない」、「株式公開しない」という項目は、他人資本が入ることにより、利益優先や拡大志向の考え方が入ることを避けるためでした。

しかし、他人資本を入れることと社員満足は本当に両立できないものなのか。
いや、きっと社員も、顧客も、そして株主も満足する、そんな道がきっとあるはずだと。
それを我々が目指していくべき新たな挑戦なのではないかと結論づけました。


ネクストステージ、これからのチャレンジ



自分たちで築き上げてきたこのスタイルで経営すれば、40名以下の中小企業であれば利益を継続的に出し、社員を満足させることができるということは実証できました。

資金調達することを決め、守るべくは社員満足であることが明確になり、あとは外部の株主が入っても、社員満足を実現し続けるということが私たちにとって次の大きなチャレンジ、ネクストステージになります。

私たちが新たな取り組みを宣言すると、いつもまわりからは懐疑的な目で見られることが多かったように思います。


2000年に電話がない、顧客とも会わない会社としてビジネスを始めた時は、そんなのは会社としてどうなんだとよく言われました。
ですが、いまでは新しい働き方であるとメディアから取材を受けることも増えてきています。

2004年に地元や在宅の優秀な主婦をリモートで大量採用していたやり方は、クラウドソーシングの時代で当たり前になりました。

2006年に社員満足が大事だと主張していたら、2015年にはブラック企業を排除するような法案が通り、社会的な問題として大きく見直されるようになってきています。

2011年に出した「メールの時代は終わりました」という刺激的なキャッチコピーが、今では当たり前にチャットが使われる時代がやってきています。

2012年のシリコンバレーへの挑戦も無謀だ無茶だと言われ続けてきました。


今回のこのチャレンジも、非常識なことだと思われるかもしれません。
ですがこの2015年の今、社員第一主義で株主を満足させる上場企業を目指すことを宣言したいと思います!


今までは社員満足→顧客満足の2つだけ意識すれば良かったことが株主満足というステークホルダーが1つ増えることになります。

  • 社員満足は、仕事のやりがい・労働環境
  • 顧客満足は、サービスに対する満足
  • 株主満足は、収益性

今までは収益度外視で社員やサービスへ投資していれば良かったことが、これからは収益性も意識することになります。

社員が満足するから良いサービスが提供でき、顧客も満足する。
顧客が満足するから利益が生まれ、株主も満足する。

これはまさに社員良し、顧客良し、株主良しの「三方良し」であり、チャットワークが私的なサービスから公的なサービスになるために必要なプロセスであると考えています。


チャットワークを水道や電気のようなインフラとして、ビジネス・コミュニケーションにおける当たり前の、欠かせない存在とするべくスタッフ一丸となって邁進してまいります!



今後のチャットワーク

今回の3億円の資金調達はこれから本格的に始まるチャットワークネクストステージの序章でしかありません。

まず、日本のChatWork株式会社は35名の社員数が2〜3年以内に100名を越える体制になり、シリコンバレーのChatWork Incも優秀な社員を積極的に採用していきます。



最先端のシリコンバレーでサービスのアイデアや仕様設計を行い、モノづくりニッポンで作り、世界で売るという日本とアメリカのいいとこ取りをしたハイブリッド方式で、世界のスタンダードとなるサービスの開発・提供・販売を実現してまいります。

最後にチャットワークは「日本発、世界のインフラとなるサービスを提供する」こと、そして社員満足、顧客満足、株主満足の三方良しの実現をここにお約束いたします。




長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
今後ともチャットワークをどうぞよろしくお願いいたします。


山本敏行
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ChatWork シリコンバレー社会人インターンシップ研修プログラム